一般的には二胡は独学には不向き
当事者の技量が前提ですが、一般的には独学での習得は不向きのように思います。民族楽器のため情報が(どちらかというと)少ないことも理由のひとつですが、独学よりも誰かに指南してもらう方が利点が大きい楽器だと思います。
しかし、情報はいくらでも手に入る時代です。
飽きずに丁寧に向き合えば、独学でも習得できるかもしれません。(※正しく習得できるかは分かりません)
ピアノやギターのように独学できるか?

二胡は、ピアノやギターのような具合で独学できるか?と問われれば、「(全然)できません」が答えになります。
◆理由は4点。
①ひとつ目は、楽器の扱いです。
シンプルな木製構造で、民族楽器のため、楽器の扱いにはコツがあります。指導者のちょっとした助言があればスムーズに済むことが、独学では難儀するかもしれません。
例えば、千斤(竿と弦を結ぶ糸)は、自分サイズに位置と幅をカスタマイズしなければいけませんし、外れやすい糸巻きを扱うには、押し回しのコツがあります。私の教室でも、弦楽器初心者の方がスムーズにチューニングできるまでは、そこそこ時間がかかります。チューニングが難しいのではなく、右手でボーイングしながら、左手で(糸巻きが外れないように)押し回しする事に慣れていないのです。
※糸巻きが金属で固定されている二胡もあります。
②ふたつ目は、フレットレスの楽器だということ。
ピッチの区切りがないため、自分の能力で音を取らなければいけません。
③3つ目は、きれいな音を鳴らすにはコツが必要だということ。
そこが最も大きな壁になります。「弓を弾けば誰でもきれいな音がなる」というわけではありません。二胡は2本の弦の間に弓の毛を通した状態で演奏しますが、弾き分け方もふくめて、(本当はシンプルな理屈ですが)指導者がいないと雑音に苦しむと思います。
④4つ目は、「移動ド」の楽器だということ。
これは長くなるので、興味がある方は次のリンク先をご覧下さい。(未)

私は最初の二胡は上海で手に入れました。
バイオリンをやっていたこともあり、その場でドレミファソラシドが弾けたので「これは簡単そうだ」と購入したのですが、日本でさあ弾いてみよう!と思った時に、まず楽器の扱いで足止めをくらいました。わけが分かりませんでした。特に、二本の弦を竿に縛り付けている千斤の存在は、「糸?!」「なんだこれは?」となりました。駒の下にかます謎の(ぼろっとした)スポンジも「これは何?」「掃除用具?」状態で、民族楽器ならではの素朴な素材に困惑しました。
そういうわけで、独学をしようと思った時、現実的には、まず楽器の扱いに困ってしまうと思います。
弦楽器の経験がない方は、ふとした拍子に糸巻きが外れただけで大騒ぎになるでしょう。糸巻きが外れると弦が外れます。駒もどこかへ飛びますし、弦を縛っている千斤も(弦が1本残っていれば大丈夫ですが)くたっと寝てしまいます。ここから自力で弾ける状態に戻すには、二胡がどういう構造なのか「情報を得る力」が必要でしょう。
千斤の高さの調整や、駒の確認、チューニング、松やになど、弾ける状態に正しくもっていくまでも、知らない方にとっては、なかなかハードルが高いと思います。
そこをクリアして、いよいよ弾くことになったとしても、特に左手の竿の支え方が分かりづらいです。ギターとも、バイオリンとも、向きや状態が違います。似たように見えますし、それでも弾けてしまうのですが、二胡は違うんです。(私はギターもバイオリンもやっていたので分かるのですが)ここは大変重要なので、どちらかをやっていた人は「なんだ、弾けるじゃん」と思わずに、必ず!正しく二胡の構えに修正する必要があります。
全くの楽器初心者・音楽知識ゼロの場合は?
全くの楽器初心者で、リズム・音階・音高(ピッチ)が何を指すのか分からない方は、独学は難しいと思います。動画でも教本でも、最低限の音楽知識を大前提としているからです。
とはいえ、二胡という民族楽器を独学で習いたいと思うくらいですから、好奇心旺盛で音楽が好きな方だと思います。それは素晴らしいことです。その気持ちは大切にしましょう。
→まず最初に、楽譜の役割を知りましょう。
二胡は数字譜を使いますが、この段階ではそこは脇において、五線譜の読み方の指南動画をYou Tubeで探してみて下さい。幼児のための入門ピアノレッスン動画などでも出てくると思います。ざっくりでいいので、「楽譜に何が記されているのか」「楽譜に音が並んでいる様子」を、目で追ってみましょう。
→音階の構造を知りましょう。
「音階はドレミファソラシの7音を決まった法則で並べたものであること」や、「並び方には規則性があること」「音程(音の幅)は2種類で、全音と、それを半分にした半音があること」「1オクターブは半音で区切ると12音になること」を知りましょう。
→音符の役割を知りましょう。
「音符には種類があること」「種類は ’長さ’ 違いであること」「基準の長さを、倍にしたもの、割ったもの」「1.5倍」「弾かない(休符)」などを知りましょう。
そして、リズムの種類や、テンポが何を意味するかも知りましょう。
それらがベースとなります。
独学に必要なことは?
丁寧さと根気強さです。
音楽的な素養よりも、そちらが重要だと思います。独学はいつでも投げ出せます。飽きっぽい方・面倒が苦手の方には向いていないと思います。
前述の通り、二胡は手に取ってすぐに弾ける楽器ではありません。2弦同時に弦を押さえるというユニークな特徴があったり、結び紐(千斤せんきん)の位置や幅を、自分サイズにカスタマイズするなどの事前準備もあります。知識が必要です。そういった情報収集を「面倒くさい」と思う方には向いていないでしょう。

ステップを飛ばすのはNG
独学で二胡をちゃんと弾きたいと思うのであれば、ひとつひとつのステップを習得した上で、次へ進みましょう。地道に確実に進行する方が、良い未来を招きます。
独学は好き勝手に進行できますから、早く曲を弾きたいあまり、一気に先へと進んだり、習得できないことは飛ばしがちになります。これでは、’ちゃんと弾ける’ ようにはなれません。そのうち行き詰まり、弾けないのでつまらなくなり、順当に終点がやってきます。楽器ケースは閉じられたままになることでしょう。
早く曲を弾きたいと思ったのは、二胡が楽しいからですよね。そんな気持ちすら置き去りになります。ステップを飛ばして手に入ることは、結局そういう未来です。
「いやいや、私はしっかり学びたい!」と再度決意し、振り出しに戻ったとしても、一度ついた癖は自分自身が時間をかけて努力しないと戻せませんので、独学での習得は更に難しくなります。
指導者のチェックがない独学だからこそ、丁寧にステップを踏んで進みましょう。
左手のフォームは我流はNG
左手は自己流でやってはいけません。
指や腕がよく見える動画で、よく形を観察して下さい。
二胡は初級を終えるとポジション移動を学びますが、左手が間違っているとスムーズにポジション移動できなくなります。ビブラートや二胡特有の滑音もかけられなくなります。
右手はシンプルに/独学習得は難しい
右手のボーイングは一見簡単そうですが、左手よりも重要で、習得の壁は高いです。そこは指導者につかないと掴みにくい部分ですから、右手については難しいことは考えず、音が鳴ればいいと割り切って、動画を真似てみて下さい。注目すべきは、弦と毛の角度、肩の脱力、弓のストローク、です。
二胡は、弦に圧力をかけず、直角に、素直に左右に引けば、比較的容易に音は鳴ります。音が生まれる物理に立ち返って、シンプルに弾いて下さい。余計なことをするから雑音になります。(どの楽器も同じです)
演奏法は我流でもいいのか?
そもそも音楽はパーソナルな楽しみですから、演奏法が我流でも全くOKだと私は思います。
しかし、時を経てきた奏法というものは、発音や身体の理にかなっていて無駄な動きがないため、楽(らく)で美しいです。既存の演奏法に沿って独学する方が、我流よりもスムーズに習得できると思います。
独学を脱落しないために
目標を決めましょう!
具体的にどの曲を弾きたいかや、自分にとっての二胡の夢を設定しましょう。実現可能か不可能かどうかは問題ではありません。目標を持つことが学びの力をサポートしてくれます。
そして、憧れの二胡奏者を見つけて下さい。
You TubeでもCDでもなんでもいいので二胡の演奏をたくさん聞いて下さい。ポップス、歌謡曲、ドラマ主題歌、日本の童謡、西洋クラシック、ジャズ・スタンダード、シャンソン、ラテン、ロック、中国伝統曲、民族音楽など、ジャンルに制限はありません。自分が好きな二胡のスタイルや音色に触れて、その曲を美しく弾きこなす自分を目標と定めましょう。
「自分が二胡に焦がれる何か」をたよりに、二胡初心者の投稿や動画も励みにして(励まし合って)、脱落したくなる時は、最初の「目標」を思い出してくださいね。
必要に迫られていることや、どうしても習得したいという熱意はもちろん、明確な目的があることは、独学の道を照らしてくれるはずです。

初級だけ教室に通うという選択肢は◎
「困ったら教室で学ぼう」と考えている方は、その作戦はおすすめしません。困った後に教室に行っても、(独学で)我流の癖がついた分、やり直しがかなり厄介になります。癖はなかなかとれませんので、後で(ものすごく)後悔します。
既に楽器を手に入れていて、二胡に興味があるのなら、「独学→困る→教室で学ぶ」ではなく、「初級だけ教室で学ぶ→独学」とした方がいいです。とりあえず体験レッスンに行ってみてはどうでしょうか。
カルチャースクールなど1クールごとに更新する教室でしたら、とりあえず1クール通えばいいのですから気軽だと思います。そこで、楽器の扱い方と、構え方、音の出し方、数字譜の読み方を学んで下さい。それだけで、かなり!違うと思います。その後は独学でも大丈夫でしょう。様々な方が動画をアップしてらっしゃいますから、ある程度までは上達できると思います。

情報の扉は広く!複数の指導者の動画を参考にしましょう
一箇所の情報ではなく、複数の指南動画を参考にされて下さい。
素人ではなく、二胡の指導者の動画を参考にしましょう。
独学では、どの指導者が良いか、どの情報が良いかを、判断する知識がないと思います。情報の扉は広く開けた方が絶対にいいです。
奏法は指導者で異なる部分があります。どっちが正しいの?と迷うと思いますが、その点は、独学でも教室に通っていても同じ問題です。(奏法は異なっても)共通する部分があるはずですから、そこに着眼しましょう。
二胡が好きであることに邁進
最初は独学でやっていたというフランスの人気ユーチューバー二胡奏者もいますから、他に方法がなく、必然的にやらざるおえない状況はパワーに変わります。二胡が好きであることに邁進して、目標を明確に持って進んでみて下さい。
私の話に戻りますが、当時はYou Tubeはまだありませんでした。
今のようにたくさん動画があったら独学できたか?というと、楽器経験者の私でも確実に無理だったと思います。二胡は全くの初心者なのに、できているかどうかを判断する人がその自分?!なわけですから、結局何が正しいのか分からなくなったと思います。特に、他の楽器の癖もあり、自分勝手にこれが正しいと思いこんでいたと思います。性格的にも自主稽古は速攻で!飽きたと思います。
教室へ通ったから私は続けられました。そういう側面もあると思います。
環境は人それぞれですね。
どうぞ、好奇心を大切に、頑張ってください。
以下の記事も興味があったら参考にして下さいね。
皆さんの二胡ライフが楽しくなりますように♪